
平成19年当時、集団的自衛権の行使は是か否か?
本サイトでも取り上げた「昭和47年政府見解」の読替え問題(根拠詐称問題)を見事に応用して政府の憲法解釈変更の是非を問う民進党山尾議員の質疑が話題になっています。焦点となったのは平成19年に実施された司法試験の解答。
当時「集団的自衛権の行使は禁じられているか否か」という設問において答えは「禁じられている」であったが、現政府が説明する「限定的な集団的自衛権の行使は昭和47年政府見解を根拠として認められる」に従うと平成19年時点での解答は「禁じられていない」になるはずでは?と問うもの。
山尾議員の厳しい追及に対して「言及を差し控えたい」「答える立場にない」を連呼する金田法務大臣。国会で行われている質疑答弁を見れば見るほどに、政治に「心」が失われてしまっていることを感じられます。今後の政府の誠意ある対応に期待しつつ、本答弁を文字起こしさせて頂きました。
山尾議員や、同じく民進党の逢坂議員による本件追及は続いています。今月(11月)10日に衆院、16日には参院で憲法審査会が再開されるとのことです。その開催直後にこの話題がどれだけ騒がれるかが勝負の鍵を握ります。
山尾議員によって公開された動画(国会中継録画)
本日法務委員会にて、平成19年司法試験の設問で「集団的自衛権の行使が禁じられている」というのが正答だったことに関して金田勝年法務大臣に質問しました。youtube にアップしましたので、是非ご覧ください。https://t.co/4EUckwH0KM
— 山尾しおり (@ShioriYamao) 2016年10月21日
会議概要
開会日:平成28年10月21日(金)
開始時間:10時45分〜 (48分間)
会議名:法務委員会
委員長:鈴木 淳司 (自民党)
法務大臣:金田 勝年 (自民党)
委員:山尾 志桜里 (民進党)
会議内容

きょうはこの委員会で30分少しの時間をいただいていますので、あそこでちょっとお互い消化不良だった部分をですね、しっかりと丁寧に議論におつき合いをいただければというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
まず、復習からですけれども、お手元の資料1をごらんください。平成19年の新司法試験短答式、マル・バツ、記号式ですね、この公法系科目第13問でございます。上からふたつ目の片仮名のウという文章を見ていただきたいと思います。
「憲法第9条について、政府の解釈によれば、同条によって集団的自衛権の行使が禁じられており、」 というふうで、後に文章が続いています。
このウの文章ですけれども、大臣、お尋ねいします。平成19年当時の答えとして、このウ文章の正解はマルでしょうか? バツでしょうか?





法務大臣としては、問題及び正解の公表をされております範囲を超えてですね、司法試験の個々の問題、内容等については差し控えさせていただきます。


したがいまして、法務大臣としては、公表されている問題、正解、そうした範囲を超えて司法試験の個々の問題、内容等について所見を申し上げることは差し控えさせていただきます。


法科大学院を中核的な教育機関といたします新たな法曹養成制度を整備することに伴いまして、法科大学院における教育と司法試験との有機的連携を確保するという観点から、それまでは法曹三者だけであった委員の構成を見直して、学識経験者を加えることとしましたほか、所掌事務として、司法試験等の実施に関する重要事項についての調査審議及び大臣への意見具申を、いわゆるこれは審議会機能とでも言えるわけですが、これを加えることとしたものであります。
そこで、新たに設置する司法試験委員会につきましては、このような審議会機能に着目して、国家行政組織法第八条の審議会として設置されたものであります。

そして、改めて、大臣、もう1回ですね、このウの文章を見ていただきたいんです。この文章を見ていただくと、よろしいですか?
「憲法第9条についての、政府の解釈によれば、」とありますよね?
これが、もしですね、政府に限らず、一般論としての憲法解釈を問うている問題であれば、大臣の答弁は、もしかしたら通用する余地があるかもしれません。憲法解釈において、まぁ政府たる大臣の解釈を押しつけるのではなくて、司法試験考査委員、裁判官とか検察官とか弁護士さん、学識経験者から成る民間も含めた考査委員の憲法解釈、独立性、中立性を確保すると。彼ら、彼女たちの判断を尊重すると。こういう答弁は成り立ち得る余地が私もあると思います。
でも、この文章は、政府の解釈を聞いているんですね。憲法9条が集団的自衛権の行使を禁じているか否かという大論点についての政府の解釈を聞いています。
政府の解釈についてなので、政府の責任ある一員に聞かなければなりません。政府の一員としてこの司法試験を所管しているのは、まさに法務大臣たる金田大臣であります。したがって、答えていただきたいと思います。
来年の司法試験で同じ問題が出たら、この文章はマルですか? バツですか?


これ、そうしたら、受験生の立場に立ってみましょう。
法務大臣は、「これは司法試験委員会、あるいは考査委員の独立性に反するから答えられない」と言う。
じゃあ、受験生、国民、そして国民の代表たる私たちは、どこで、誰に、この質問についての答えをいただけるんでしょうか?
司法試験管理委員会、今は委員会ですね、或いは考査委員の方に、きちっとしたこういう公の場で答えていただく機会、どこにあるんでしょうか?





〜中断〜


そこで、お尋ねします。この平成19年のこの問題について、当初はマルであったと。「今これが出たら、あるいは来年これが出たら、マルですか? バツですか?」ということについて、法務大臣は答えません。そうしたらば、受験生、国民は、いつ、誰に、どのようにお尋ねすればよろしいのですか?

その結果、仮に司法試験考査委員が試験実施当時の正解として誤りであったと判断した場合には、正解を訂正することになるということもあり得る、こういうふうに承知をしております。
したがって、司法試験委員会において、司法試験考査委員に検討を依頼することとなると思います。



大臣、言ったらいいんですよ。これは変わったんだから、政府の解釈。これは政府の統一見解だと思いますよ、変わったと。今の政府の見解では、この憲法9条について、集団的自衛権の行使が禁じられているというこの文章についての評価は変わったんですよ。
当時は禁じられてる、マルでした。今は、少なくとも一部禁じられてない、バツなんですよ。これは政府の統一見解だと思いますよ。
大臣、これはおっしゃったらいかがですか?



そういう中で、先ほど申し上げております司法試験委員会の考査委員に、将来のことについては、その段階でお感じになるその部分を御相談いただくということを先ほど申し上げたんですが、その中身について申し上げれば、そういうふうに私は申し上げたいと思います。


その中で、憲法の行政府としての一般的解釈、これについては内閣がお答えすることになりますが、その場合に、法務大臣は内閣を代表する立場にはないものであるということは御理解をいただきたい。
そして、お尋ねの、法務省の所管事項と関係なく、法務省の所管を離れて憲法の意義とか規定のあり方を一般的に問う場合には、法務大臣としてはお答えをする立場にはないと、このように考えております。



じゃあ、この答えが変わった可能性があるのか? ないのか? これについて答えていただけませんか?

もっとも、平和安全法制につきましては、法務省が所管するものではありません。その内容に立ち入って、憲法との適合性についてこれ以上の答弁をする立場にはないことを御理解いただきたいと思います。

でも、今の大臣の答弁を前提とすれば、「あの成立した安保法制は当然合憲である。9条にも反していない」と。その安保法制の中に集団的自衛権の行使が一部含まれていることは明白であります。
したがって、大臣の答弁を前提とすれば、これは、「現在の政府の見解によれば、まさに、集団的自衛権の行使は、現在、憲法の9条は禁じられていない」と、したがって、「答えは変わった」ということを言っているのではないんですか?


もうひとつお話し申し上げます。今、大臣は、「将来のことには答えられない」とおっしゃっておられます。それでは、もうひとつ、私の方から疑義を提起したいと思います。
実はこの第13問、現在の政府答弁を前提にしたら、平成19年時点でも正解はバツだった余地があるのではないですか?
今から申し上げます。例えば、中谷大臣は、我が党の小西洋之議員からの質問に対してこのように答えています。小西さんがこのように質問している。「限定的な集団的自衛権を行使するということは、昭和47年政府見解のいわゆる基本的な論理①、②に現に含まれていると、法理として含まれていると、昭和47年政府見解をつくったときに、つくった当時から法理として含まれている、こういう理解でよろしいですか?」と中谷大臣に尋ねています。
それに対して、中谷大臣は極めてシンプルに、明確にこう答えている。「これはまさに基本的論理でございますので、含まれているということでございます」と。「昭和47年当時から集団的自衛権の行使を認める論理が9条に含まれている」と。こういうことを中谷大臣はおっしゃっております。
つい最近、10月5日の予算委員会、我が党の舟山議員が同様のことを安倍総理に尋ねています。「基本的な論理として同盟国に対する外国からの武力攻撃も読めるんだと、47年解釈ですね、そういった理解でよろしいんですか?」と。総理もこれに対して同じく、「この基本論理の中にはこれは含まれているということでございます」と、こう答弁なされています。
もうひとつ申し上げましょう。我が党の小西議員が横畠法制局長官にこのように質問しています。小西さんはこういうふうに質問しています。「同盟国、我が国でない他国に対する外国の武力攻撃ということもここに概念的に含まれるというふうに初めて考え出したのは、横畠長官、あなたが初めての法制局の長官ということでよろしいですね?」と。
これに対して、横畠長官は大変おもしろい答弁をされている。「同様に考えていた者がいたかどうかは存じませんが、この昭和47年の政府見解そのものの組み立てから、そのような解釈、理解ができるということでございます」と。
昭和47年の政府見解そのものから、そのような解釈、理解ができると。集団的自衛権の一部行使が含まれていたと解釈、理解ができると。そして自分はそれに気づいたと。同様に気づいていた者、考えていた者がいたかどうかは自分は存じないと。こういう答弁であります。
大臣、伺います。横畠長官の言う同様に考えていた者、同様に気づいていた者、実は47年見解の中に既に集団的自衛権の行使が一部含まれているんだと気づいていた者が受験生の中にいたら、この文章に対しての答えはバツになるんじゃありませんか?




この問題は2点なんですね。2点で人生が変わるんです。もう1回言いますけれども、6回落ちている私が言うんだから間違いありません。一生をかけてるんです。
もしこの答えを撤回しないというなら、あの安保法制の議論のときの政府のへ理屈を撤回するしかないんです。どっちかです。
私は、もちろん求めるのは後者ですよ。あの平成19年当時、あの47年見解の中に集団的自衛権の行使が一部含まれる、そんな解釈はなかったんだから、そして、今も、真理としてはないのです。
大臣、どっちか撤回しなきゃならない。どっちを撤回されますか?

そして、試験を実施した平成19年当時の正解として、御指摘の第13問ウの記載は正しい旨を公表しております。それ以上の集団的自衛権の解釈につきましては、私は答える立場にないものと考えております。

もしこれから先、何もしないというのであれば、今、この場で大臣が、その疑義に対してですね、論理的にそれを払拭できなければなりません。
今、この時点で、大臣の答弁で、実はあの時点から、今の政府の見解を前提とすれば、当時からバツだった余地があるのではないか? と。この疑義は誰がどう見ても払拭されておりません。
したがって、大臣、残りの時間でこの疑義を払拭していただくか、或いは、さっき大臣自身がおっしゃったように、「疑義が生じたときは考査委員に検討を依頼する」と。この問題について、大臣、検討を依頼するべきではありませんか?
司法試験法の第12条2項の中にですね、「法務大臣の諮問に応じ、司法試験の実施に関する重要事項について調査審議をすること」と。委員会はこういう権能を有しております。大臣、委員会に試問してください。いかがですか?




〜中断〜


そして、一般論としてなんですが、司法試験の正解について後に疑義が生じた場合には、司法試験委員会において、司法試験考査委員に検討を依頼することとなり、その結果、仮に司法試験考査委員が試験当時の正解として誤りであったと判断した場合には正解を訂正することになると、こういうふうに受けとめております。

でも、それなりに、私この場で、疑義が生じるに値するぐらいの質問内容はしたつもりです。疑義が生じていないとおっしゃるなら、払拭してください。





もしここで疑義が生じていないと突っぱねるんだったら、政府の統一見解と大臣の見解が違うことになりますよ。
政府の統一見解は、「もうあの当時から、昭和47年見解の中に既に集団的自衛権の行使を一部認めるというその考え方が含まれていたんだ」と、そういうことですから。政府統一見解を求めたいと思います。いかがですか? 大臣。

〜中断〜




〜中断〜



それに対して、大臣、委員会に検討を命じればよいではありませんか?
そしてもうひとつ。これは委員会と関係なく大臣にしか答えられないと思いますけれども、平成19年当時、政府の見解としては、「憲法9条の中に集団的自衛権の行使が既に一部認められていた」と、これが、今の安保法制の議論の前提とすると、現政権の見解ではないですか。それに対して、大臣は違う内容の答弁をされています。
だって疑義がないというんだから。当時にさかのぼって、今もマルだとおっしゃるんだから。しっかりこの点について、私は政府統一見解を求めたいと思います。
大事なことです。平成19年当時、集団的自衛権の一部行使が憲法9条の中に既に基本的な論理として認める余地があったのか? なかったのか? それについて政府統一見解を求めます。
そして、これに連動する形で、平成19年当時のこの問題の解答として、マルだったという解答に疑義が生じていますので、それに対してきちっと司法試験委員会に検討を命じることを強く求めます。理事会で協議していただきたいと思います。


それから、もう一点。平和安全法制については、法務省が所管するものではありません。中身について申し上げております。その内容に立ち入って、この議論についてこれ以上の答弁をする立場にないことは御理解をいただきたいと、このように思っております。

そして、最後に伺いますけれども、「現時点で疑義があるというふうに理解していない」「司法試験委員会がそのように把握していない」まぁそんなことをおっしゃいましたけれども、それを、しっかり疑義が生じたということを把握して委員会に命じるのは、まさに大臣の仕事です。委員会に伝えてください。いかがですか?

加えて、平和安全法制につきましては、内閣提出法案として成立をしたものであり、内閣の一員である法務大臣としては、当然に合憲の法律であるという立場にあることは以前申し上げたとおりでありますし、法務省は、その中身、平和安全法制について所管するものではなくて、その内容に立ち入って、これ以上の答弁をする立場にないことを御理解をいただきたいと思います。

大臣、やっぱり、無理が通れば道理が引っ込むような、まぁそういうことが起きる世の中で、法務大臣はしっかりと道理を体を張って守る立場にあると思います。そういう役割を果たしていただきたいというふうに思うんです。
したがって、やはりこの憲法9条の問題、これについて、今大臣がおっしゃることを前提にするとね、「疑義が生じていない」とはっきりおっしゃったから、「疑義が生じていない」というんだったら、「当時からそんなものは、集団的自衛権の一部行使は基本的な論理の中に含まれていないのだ」と、そうであれば、それは私はすばらしい答弁だと思う。今の政府のへ理屈から独立した法務大臣の見識ある答弁だと思います。そういう趣旨だと受けとめてよろしいんですか?


決戦は次の憲法審査会!
本件を追及するチャンスは9月26日から開かれている臨時国会で、間も無く開かれようとしている「憲法審査会」です。2015年6月の憲法審査会では、3人の憲法学者が憲法違反を訴えましたが、「学説上の認識である」として政府が引き下がることはありませんでした。
しかし、この「47年見解」の読み替えは、明らかな意図を持って行われた根拠のすり替えです。この1点を追及することで、安倍政権の誤ちを厳しく追及することができます。これを覆せるかどうかは、あなたのアクションにかかっているのです。
本件を追及する具体的なアクション
とにもかくにも、まずは「知ってもらうこと」必要なのは「世論を盛り上げること」そして「メディアや野党に動いてもらうこと」です。


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拡散お願いします!【テキスト版】憲法解釈変更による政府見解とH19司法試験答案との相違点を猛追/2016年10月21日 衆議院法務委員会 山尾議員 http://miyake-yohei.com/politics/47kenkai_20161021yamao/
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【2】各メディアに「取り上げて欲しい」と依頼する
テレビ・新聞・雑誌社宛に電話・メール・FAX・手紙などでアプローチ
※「編集部●●様宛」「論説員●●様宛」など具体的な部署や名前が分かるとより効果的です。
【3】野党各党に「憲法審査会で追及して欲しい」と依頼する【最重要】
A.野党議員および党首宛に電話・メール・FAX・公開書簡などでアプローチ
B.野党議員の事務所を訪問して直接訴える
※本人不在でも秘書・スタッフの方に面会記録を残していただきましょう。
衆議院の憲法審査会 委員名簿
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参議院の憲法審査会 委員名簿
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「47年見解」の読替え問題を追及するアクション紹介
この「47年見解」と政府の憲法解釈を取り巻く問題を追及するチーム「47年見解となかまたち」による具体的な実践例はこちらを。各メディアや議員へのアプローチ方法を写真入りで説明しています。
今国会で「47年見解」を追及している民進党の山尾志桜里議員。法務委員会で「平成19年司法試験の解答が安倍政権の集団的自衛権解釈と矛盾する」ことを指摘したにも関わらず金田法務大臣は何も答弁しなかった。一問2点で人生が狂った人もいる。真相を解明してもらえるようアクションを起こそう! pic.twitter.com/SulIbOMfJX
— 47年見解となかまたち to アクション (@47nenkenkai) 2016年11月4日
本件に関する記事紹介
検事出身の山尾氏は、司法試験に七回目の挑戦で合格した自身の経験も踏まえ「多くの法律家が安保法に問題があると思っている中で、学問的な信条を捨てて政権に迎合しなければ法律家になれない環境ができていくなら罪は非常に重い」と批判した。